不動産鑑定士が評価算定や資料整理・分析の際に使用するアプリ・ソフトは、大きく分けると以下の種類があります。多面的に整理します。
1️⃣ 表計算・統計分析系
主な用途
- 収益還元法のキャッシュフロー計算
- 取引事例比較法のデータ整理・統計分析
- 原価法の再調達価格計算や減価償却計算
代表的ソフト
- Microsoft Excel
- 計算式・グラフ作成・ピボットテーブル・条件付き書式
- Google スプレッドシート
- クラウド共有、チーム作業向き
- R / Python(Pandas, NumPy)
- 大量データ分析・統計解析・シミュレーション
2️⃣ CAD・GIS系(地理情報・図面作成)
主な用途
- 土地形状・敷地図・用途地域図・周辺環境図の作成
- 公共事業・都市計画案件の地図作成
- 面積計算・座標計算
代表的ソフト
- AutoCAD / Jw_cad
- 図面作成、建物面積・敷地面積計算
- ArcGIS / QGIS
- 地理情報分析、航空写真・地形図・道路ネットワーク分析
- Google Earth / Map
- 現地状況の把握、測量データ確認
💡 公共事業や大型土地案件ではGISを使った地形・権利範囲分析が不可欠
3️⃣ 不動産評価・収益シミュレーション専用ソフト
主な用途
- 収益還元法の賃料・運営費・利回り計算
- DCFシミュレーション
- 原価法・減価償却計算
- 比較事例の自動補正・類似性分析
代表的ソフト
- 不動産鑑定士向け評価支援ソフト
- 例:アセットマネジメント用DCFソフト、鑑定評価計算支援ツール
- 商業用ソフト
- CREシミュレーションソフト(大規模収益物件向け)
💡 日本国内では各事務所・会社ごとに独自にカスタマイズされた評価ソフトも多く使用されています
4️⃣ 文書作成・報告書作成系
主な用途
- 鑑定評価書・報告書の作成
- 図表・写真の挿入
- 提出用PDF作成
代表的ソフト
- Microsoft Word / Google ドキュメント
- Adobe Acrobat / PDF編集ソフト
- PowerPoint / Google スライド
- 図表・グラフの整理やプレゼン資料作成
💡 鑑定評価書は法的・税務的根拠が明確である必要があり、WordやPDFでの整形が必須
5️⃣ データベース・情報収集系
主な用途
- 土地・建物の取引事例データ検索
- 公示地価・路線価・固定資産税評価データ取得
- 賃料相場・人口統計・地域経済データ収集
主なサービス・アプリ
- 国土交通省 不動産取引価格情報
- 土地総合情報ライブラリ(登記・固定資産税情報)
- 民間データベース
- At Home、REINS、日経不動産マーケット情報など
- 統計データ検索アプリ
- e-Stat(政府統計ポータル)
6️⃣ 補助ツール・便利アプリ
- 電卓アプリ
- 割引率・キャップレート計算用
- メモ・写真アプリ
- 現地写真や調査メモの整理
- クラウドストレージ
- チーム共有(OneDrive, Google Drive, Dropbox)
🔹 まとめ
- Excel / スプレッドシート:計算・統計分析の中心
- CAD / GIS:地形・敷地分析、公共事業案件
- 専用評価ソフト:収益還元法・原価法・比較法の効率化
- Word / PDF:報告書作成
- データベース / 情報収集:取引事例・地価情報
- 補助ツール:メモ・写真・クラウド共有
💡 実務では、これらを組み合わせて使用することが一般的です。
特に経験が増えると、「どのツールをどの段階で使うか」のパターン化が効率化のカギになります。
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