IT・経営コンサルが社長や経営層から情報を「聞き出す力」に関して、多面的・多角的・詳細具体的に整理して解説します。
この「聞く力」は、単なる質問ではなく、経営改善の材料を引き出す高度な対話スキルです。
1. 聞く対象と目的の分類
A. 現状把握に関する聞き取り
- 業務フロー
- 「受注から出荷までの具体的手順を教えてください」
- 「作業で手間がかかる部分はどこですか?」
- 組織構造
- 「各部署の役割・責任範囲を教えてください」
- 「意思決定フローはどうなっていますか?」
- 財務・KPI
- 「売上・利益・在庫回転率など主要数値は?」
- 「過去の財務データで課題を感じた部分は?」
B. 課題・問題点の掘り下げ
- ボトルネック確認
- 「業務で滞りが起きる部分はどこですか?」
- 「顧客クレームが多い工程は?」
- 非効率・無駄の特定
- 「繰り返し作業で時間がかかるのはどこですか?」
- 「コストがかかりすぎる業務は?」
C. 将来像・目標の聞き取り
- 短期目標
- 「今後1年間で改善したいことは?」
- 「どのKPIを最重要と考えていますか?」
- 中長期戦略
- 「今後3〜5年で会社をどう変えたいですか?」
- 「AIやITを活用して達成したい成果は?」
D. 情報の優先度・背景の理解
- 意思決定の優先度
- 「改善施策の優先度は何ですか?」
- 「リソース制約がある場合、どこを優先しますか?」
- 背景や理由の確認
- 「なぜこのプロセスをこうしているのですか?」
- 「これまで改善が進まなかった理由は?」
2. 聞き方・テクニック
A. 質問の種類
- オープン質問(自由に語ってもらう)
- 例:「最近業務で困っていることは何ですか?」
- クローズド質問(Yes/No、数値で確認)
- 例:「この工程は週に何回発生しますか?」
- 仮説質問(課題を仮定して確認)
- 例:「もしこの業務を自動化したら、負荷は減りますか?」
- 比較質問
- 例:「前年と比べて売上構造は変わりましたか?」
B. 聞き方の注意
- 専門用語を避け、平易な言葉で話す
- 一度に情報を詰め込みすぎず、1テーマずつ確認
- 相手の言葉を繰り返す・言い換えることで理解を確認
- 話の中から「隠れた課題」を拾う(数字・感情・体験)
3. 聞き出す内容の具体例
分類 | 聞き出す内容 | 目的・理由 |
---|---|---|
業務フロー | 各工程の担当・時間・作業手順 | 無駄・非効率の特定 |
システム利用状況 | Excel・メール・業務ソフトの使用状況 | 自動化・IT導入の可能性 |
財務データ | 売上、利益、在庫、仕入れコスト | 改善優先度の判断 |
顧客・市場 | 顧客属性、受注傾向、クレーム | マーケティング改善・売上予測 |
組織・人材 | 社員人数、スキル、負荷 | 教育・業務再配置の判断 |
過去の施策 | 改善したがうまくいかなかった施策 | 成功/失敗の要因分析 |
将来目標 | 売上目標、システム導入計画 | 改善方針・KPI設定 |
制約条件 | 予算、人材、時間 | 現実的な改善計画策定 |
4. 聞く力を高めるコツ
- 傾聴優先:話を遮らず、相手の言葉に集中
- 確認・要約:聞いた内容を自分の言葉で繰り返す
- 掘り下げ質問:表面的な回答に対して「なぜ?」を繰り返す
- 見える化:聞いた内容をフローチャートや表に即時整理
- 優先度の見極め:聞き出した情報から、改善すべき順序を判断
💡 ポイント
- 社長・経営層は多くの場合「全体像は把握しているが細部は曖昧」
- コンサルは「細かい事実・数字・プロセス」を聞き出すことで、AIやシステム化の余地を明確化できる
- 質問の順序と聞き方の工夫で、社長が気付いていない課題も引き出せる
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